神々の伝承

豊玉毘売/豊玉姫

豊玉毘売/豊玉姫とは?

  • 古事記における表記
    • 豊玉毘売とよたまびめ / 豊玉毘売命とよたまびめのみこと
  • 日本書紀における表記
    • 豊玉姫とよたまひめ

登場文献

  • 古事記「天孫日子穂穂手見命」の段
    • 故隨教少行備如其言卽登其香木以坐 爾海神之女豐玉毘賣之從婢 持玉器將酌水之時於井有光 仰見者有麗壯夫 訓壯夫云遠登古下效此 以爲甚異奇 爾火遠理命見其婢 乞欲得水 婢乃酌水入玉器貢進 爾不飮水解御頸之璵含口 唾入其玉器 於是其璵著器婢不得離璵 故璵任著以進豐玉毘賣命
  • 日本書記 巻第一神代下「彦火火出見尊」の段
    • 已而彦火火出見尊因娶海神女豐玉姫 仍留住海宮 已經三年 彼處雖復安樂 猶有憶郷之情 故時復太息 豐玉姫聞之謂其父曰 天孫悽然數歎。蓋懷土之憂乎 海神乃延彦火火出見尊從容語曰 天孫若欲還郷者 吾當奉送。

豊玉毘売/豊玉姫の伝承

 天孫瓊瓊杵尊の子で神武天皇の祖父となる「火遠理命」が兄の「火照命」の釣針を失くしてしまった事を発端として物語が始まっていく「海彦山彦神話」の中で塩椎神の助言に従い訪れた海中の宮殿に住んでいる海神(綿津見神)の娘として登場するのが「豊玉毘売/豊玉姫」になります。
 火遠理命に娶られた豊玉毘売は三年間宮殿に共に生活をしていたようですが、地上の故郷を忘れられない火遠理命が時より見せる深いため息に地上に戻りたがっているのではないかと感じ、父である綿津見神の助力を請うて火遠理命を地上へと送り返しています。綿津見神の助言もあり兄を屈服させた火遠理命の元に火遠理命との間にできた子を出産する為に(古事記では単独で、日本書紀では妹の玉依姫を連れて)地上を訪れます。
 火遠理命に「出産中は決して産屋の中を覗かないでください。」と念押しをしたにもかかわらず、火遠理命に覗かれ、龍の変身している姿を見られてしまい、辱めを受けたとして海と陸の境を閉じて海中に姿を消してしまいます。この時、生まれた子は萱で包んで海辺に置いていったということから彦波瀲武盧茲草葺不合尊ひこなぎさたけうがやふきあえずのみことと言います。

三重県伊勢市に残る「とよたま姫伝説」

 三重県伊勢市浜島町地区には海彦山彦伝説の主幹をなす「失われた釣針説話」部分がごそっと抜け落ちた感じになりますが「とよたま姫伝説」が伝えられています。

 志摩半島の御座地区にすむ民が怪物に苦しんでいる時に、彦火火出見尊が怪物を退治し、そのまま浜島の炎崎に住み、毎日山に狩りに、海に釣りに出かけていたとか。そんな時、釣りをしている時に美しいお姫様と出会い、この御姫様が竜宮からやってきた豊玉姫であった。二人がであった島を大宿島とよぶ。
 二人は夫婦になり三年がたつと、子供が出来、浜島の浜辺に産屋を建ててそこで子を産んだ。この時、子が生まれた事に嬉しさのあまり「産屋に入らないでください」という豊玉姫の願いを忘れてしまい中に入ってしまった。中では龍が赤ん坊を抱いており、「私は竜宮に住む龍神の娘です。この姿を見られてしまっては一緒にいる事はできないので、竜宮に帰らせてください。」といって子を置いて帰ってしまった。
 竜宮に帰る時、三年間の楽しい時間を思い出して「あらなつかしや」と言い、大粒の涙を流しながら旅立っていった。この事から現在では浜島湾と呼ばれる場所は「なつかし浦」とも言い、この湾で取れる真珠は「豊玉姫の涙」と言われている。

要約するとこんな感じの伝説になります。くだしくは三重県庁のHPにある「三重の文化」の中の「とよたま姫ものがたり」をご覧ください。

 当サイトでは、古事記の現代語訳を行うにあたって、「新潮日本古典集成 古事記 西宮一民校注」を非常に参考させて頂いています。原文は載っていないのですが、歴史的仮名遣いに翻訳されている訳文とさらに色々な注釈が載っていて、古事記を読み進めるにあたって非常に参考になる一冊だと思います。

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神々のデータ

神名古事記 :豊玉毘売 / 豊玉毘売命
日本書紀:豊玉姫
神祇国津神
別称
綿津見神
配偶火遠理命/彦火火出見尊
彦波瀲武盧茲草葺不合尊
備考

豊玉毘売/豊玉姫を祀る神社

まとめ

 天皇の祖先とされる「皇祖神」に海の神である綿津見神の血を取り込む為に登場したのが豊玉姫になる感じかと思います。一説には彦火火出見尊と後に神武天皇となる彦火火出見尊は実は同一人物として描かれていたが何らかの政治的思惑で途中で彦波瀲武盧茲草葺不合尊を挟み込んだとも言われています。同一人物だった説が本当だったならば、豊玉姫は初代天皇の皇后・・・初代皇后?・・になっていた可能性もあったのか?とも思いますが、人と神が交わる事はないと思うので神代の神話はもう少し違っていたと考えるのが妥当なのかなという気もします。

 日本書紀を読んでいくにあったって、原文は漢文で書かれているので非常に読み込むのが困難なので、現代語訳されている本が一冊あると助かるかと思います。当サイトでは、戦前から日本書記の翻訳本として有名な岩波文庫の日本書記を非常に参考にさせて頂いています。

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