神々の伝承

保食神

保食神とは?

登場文献

  • 日本書記 巻第一神代上「神生み」の段一書第十一

一書曰 伊弉諾尊 勅任三子曰「天照大神者 可以御高天之原也 月夜見尊者 可以配日而知天事也 素戔鳴尊者 可以御滄海之原也」既而 天照大神在於天上曰「聞 葦原中国有保食神 宜爾月夜見尊就候之」月夜見尊 受勅而降 已到于保食神許
保食神 乃廻首嚮国則自口出飯 又嚮海則鰭廣鰭狹亦自口出 又嚮山則毛麁毛柔亦自口出 夫品物悉備 貯之百机而饗之 是時 月夜見尊 忿然作色曰「穢哉 鄙矣 寧可以口吐之物敢養我乎」廼拔劒擊殺 然後復命 具言其事 時天照大神 怒甚之曰「汝是惡神 不須相見」乃與月夜見尊 一日一夜 隔離而住 
是後 天照大神 復遣天熊人往看之 是時 保食神實已死矣 唯有其神之頂化爲牛馬 顱上生粟 眉上生蠒 眼中生稗 腹中生稻 陰生麥及大小豆 天熊人 悉取持去而奉進之 于時 天照大神喜之曰「是物者 則顯見蒼生可食而活之也」乃以粟稗麥豆爲陸田種子 以稻爲水田種子 又因定天邑君 卽以其稻種 始殖于天狹田及長田 其秋 垂穎 八握莫莫然甚快也 又口裏含蠒 便得抽絲 自此始有養蠶之道焉 保食神 此云宇氣母知能加微 顯見蒼生 此云宇都志枳阿鳥比等久佐。

伊弉諾尊から天照大御神と共に天を治める様に言われた月夜見尊は、天照大御神から「葦原中国にいる保食神がいると聞いたので様子を見てくるように。」と勅命を受け保食神の元に向かった。
保食神は、訪れた月夜見尊をもてなすために「地に向かって米飯を、海に向かって魚を、山に向かって獣」を吐き出し、それを机に並べるが、それを見た月夜見尊は「吐き出した物を食べさせようとは何事だ。」と怒り、保食神を切り殺してしまった。
 これを聞いた天照大御神は月夜見尊に断絶を言い渡し、これが昼と夜が生まれる事になったという。
 葦原中国に天熊人を派遣したが、保食神は既に死んでしまっており、その遺骸の頭から牛馬が、頭から粟が、眉から蚕が、目から稗が、腹から稲が、陰部から麦と大豆と小豆が生えていました。これらは地上の人々が生きていく為の食糧となります。
 粟、稗、麦、豆は畑の種子、稲は田の種子とし、そして天邑君を定め、稲を田に植えると秋に稲穂が首を垂れ、とても見事だった。蚕は口から糸を吐き、養蚕の繋がった。

  • 古事記には登場せず。

保食神の伝承

 生前には口から”米飯”、”魚”、”獣”を吐き出し、月夜見尊に切り殺されたその遺骸からは”牛馬”、”粟”、”蚕”、”稗”、”稲”、”麦”、”大豆”、”小豆”が生まれています。この話は「食物起源神話」とも言われていて同様の神話が東南アジアを中心に各地に見られるんだとか。この話以外にも古事記や日本書紀には中国や東南アジアなどの神話と同様の話がいくつも載っている事から飛鳥時代以前からアジア各地との海路交易が行われていた事が解ってきます。

 古事記には保食神は登場しませんが、ほぼ同様の内容の話が載っていますが、古事記では須佐之男命と大宜都比売によって話が展開していきます。まあ・・・月読命はほぼ名前しかでてこない正直どんな神なのかすらよく分からない事になっていたりするので、高天原を追放された時の荒れていた須佐之男命が激高して切り殺してしまう役には丁度よかったのかもしれません。

 当サイトでは、古事記の現代語訳を行うにあたって、「新潮日本古典集成 古事記 西宮一民校注」を非常に参考させて頂いています。原文は載っていないのですが、歴史的仮名遣いに翻訳されている訳文とさらに色々な注釈が載っていて、古事記を読み進めるにあたって非常に参考になる一冊だと思います。

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神々のデータ

神名保食神
神祇国津神
別称
配偶
備考食物の神

保食神を祀る神社

まとめ

 食物の神として大宜都比売と同一視される事もあったり、伏見稲荷神社の御祭神は宇迦之御魂神なんですが、保食神と同様に食物の神という事もあって同一視される事もあって少数派ではありますが全国に鎮座する稲荷神社の御祭神としてその名を見る事もあります。

 日本書紀を読んでいくにあったって、原文は漢文で書かれているので非常に読み込むのが困難なので、現代語訳されている本が一冊あると助かるかと思います。当サイトでは、戦前から日本書記の翻訳本として有名な岩波文庫の日本書記を非常に参考にさせて頂いています。

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