寺院を巡る

大悲山三方石観世音堂(福井県三方上中郡若狭町)北陸観音霊場七番札所/若狭観音特別霊場札所

ポイント

弘法大師が巨大な花崗岩に一夜で刻んだとされる石観音像を祀る三方石観世音堂の紹介になります。片手観音とも呼ばれるこの観音像は、手足の病に非常に御利益があるとされ、その崇敬は福井県の有形民俗文化財に指定されている「手形・足形奉納品」に垣間見る事ができます。

寺院情報

寺院名大悲山三方石観世音堂
所在地福井県三方上中郡若狭町三方22-1
宗 派曹洞宗
創 建延暦年間(782-806年)
御本尊観世音菩薩
開 山伝:空海
文化財手形足型奉納品:県有形民俗文化財
霊 場北陸観音霊場 七番札所
若狭観音霊場 特別霊場札所
URLhttp://mikata.main.jp/
御朱印
参拝日:令和三年(2021年)七月二十一日

御由緒

 福井県三方郡誌によると、桓武天皇の御代の延暦年間(782-806年)に草創された観音堂であり、「三方石観音」の名で広く知られており若狭各地だけではなく近江国などからも参拝する者多しとあります。本尊は弘法大師による一夜の作であると伝えられ、大師の全国行脚の中、この地を訪れ宿した時、花崗岩に観音菩薩を刻んだとされています。

 弘法大師が刻んだとする観音像は秘仏となっていて33年毎の御開帳の時以外は拝観する事ができないのですが、どうやら観音像の右手首が未完成となっていて、片手観音とも呼ばれているんだとか。これは、弘法大師がこの地に宿した時花崗岩に一夜で観音像を刻もうとしたが、完成する前に一番鶏が鳴いたために、未完成のまま下山した為と伝えられています。手足の病に御利益があるとされ、境内には奉納された御手足型が積まれている「御手足堂」があります。

 文化年間(1804-18年)に臥龍院二十四世春山隣道により堂宇が造営されています。

 本尊の石観音像は、北陸観音霊場 七番札所、若狭観音霊場 特別霊場札所の札所本尊となっています。

参拝記

 国道27号線沿いに建つ「無位山臥龍院」の山門脇から石観世音堂に向かう道路が通っています。今回は時間がなかったので臥龍院は参拝できなかったのですが、臥龍院は三方地方の曹洞宗の中心寺院として小浜藩からの庇護を受けていたそうです。この臥龍院の二十四世春山隣道により石観世音堂の堂宇が造営され、石観世音信仰が広まったとも言われています。

 臥龍院から三方石観世音堂に向けて道を進んでいくと、参拝者用の駐車場が見えてきます。GoogleMapのストリートビューを見ると本堂近くに車を停めるスペースがありそうな感じもするのですが、今回はこの駐車場に車止めて観音堂まで歩いていこうと思います。

 道を進んでいくと、早速岩をくり抜いて刻まれた様に見える観音像が据えられています。ここから三方石観世音堂までは地味にきつい勾配の坂道が続ていきます。

 途中、このあたりの産土神であり、延喜式神名帳にも記されている「御方神社」が鎮座しています。最初、臥龍院が別当を勤めていた神社なのかな?と思ったのですが、そういった史料は見当たらず、時期は不明ですがどうやらJR西日本の三方駅近くから現在の境内地に遷座している様です。この御方神社については次回紹介していこうと思います。

寺号標

 御方神社を過ぎると、大型バス用の駐車場が見えてきます。その先に、中々の巨石に彫られた寺号標がすえられています。

境内入口

 寺号標を過ぎると緒川を渡河する橋を渡り、川沿いに坂道を登っていくと、石段の続く三方石観世音堂の境内入口が見えてきます。なかなか独特の雰囲気を醸し出していて非常に印象に残っています。

 すぐ近くには、修業大師銅像が据えられていました。

 石段を登っていくと、途中岩の上に鶏の石像が据えられていました。(写真だと白飛びしていてわかりにくくなってしまってます。)由緒でも紹介していますが、弘法大師が観音像を刻んている時に一番鶏が鳴いた為、右手が未完成となったという伝承で登場する鶏を石像にしたもの何だと思います。

鎮守社

 石段を進んでいくと、左手には朱塗りの鳥居と拝所が目を引く稲荷社が鎮座しています。

境内

 石段の参道を登った先には、自分の想像とは全く異なった境内が広がっていました。観音堂と思っていたのでもっとこじんまりとした雰囲気を想像していたんですが・・・。

観音霊水

 一見、その造りから手水舎なのかな?と思っていたのですが、どうやら観音霊水と呼ぶ湧き水を汲むことができる水場のようです。この霊水は「ふくいのおいしい水」に認定されたこともある湧き水なんだとか。

観音堂(本堂)

 入母屋造妻入り唐屋根の向拝が設けられている観音堂になります。
 この三方石観世音堂は、観音像が刻まている花崗岩を覆う様な形で建てられている事もあり、非常に特異性のある構造となっています。観音像は上記の写真で説明すると、右向きに奉安されています。このため、向拝部分から本堂に上がらせていただくと、正面は内陣、右手側に外陣といった造りになっています。・・・もっと簡単に言えば、本堂の側面に向拝が付けられていると言い換えてもいいかもしれません。

 正面中央の前立仏である観音像の後ろ側の厨子の先に本尊である石観世音像が奉安されています。次の御開帳は2026年らしいので、この記事を書いている時点から5年後ですね。

 非常に多くの提灯が奉納され、それが本堂の屋根にところせましと掲げられています。その中に・・・

  歌手の五木ひろしさんと元阪神タイガースの川藤幸三さんが奉納した提灯が中央部分に目立つ様に掲げられています。有名人が奉納した物は世の東西を問わず目立つところに掲げられるようですね。

御手足堂

 建物の全景を取り忘れてしまった御手足堂になります。本堂に置かれている手形・足形をお借りして、毎日念仏を唱えて居たい所を擦ると痛い所が直るとされ、観音様の御利益を受けた場合は、お借りした手形・足形を返却し、この時新たな手形・足形を奉納する。この奉納した手形足形をまた別の人がお借りしていくという風習になるようです。この風習が福井県の有形民俗文化財に指定されています。

 そして、返却された手形・足形が収められているのが御手足堂になります。
 実際、写真を見て頂ければわかるように、非常に数多くの手形・足形が奉納・返却されている事がわかります。

 こんな感じで手形足形についてはポスターが本堂内に掲示さえていました。

所在地を地図で確認

寺院名大悲山三方石観世音堂
所在地福井県三方上中郡若狭町三方22-1
最寄駅JR西日本 小浜線「三方駅」徒歩20分

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